「国際刑事裁判所ってなんだろう?~赤根智子所長に聞いてみよう~」では、当日参加者のみなさまから、たくさんのご質問が寄せられ、第3部Q&Aの時間内では回答しきれないくらいでした。
答えきれなかった質問を分類し、赤根智子所長にもご協力いただき、回答を整理しました。
ここからは、赤根所長の経験や考えなどについての質問です。
1 ICCの具体的な事件について
・ICCの犯罪を犯す人にはどんな人が多いのですか。
どんな人が多いか、までは私には担当した事件が少なく統計的な意味での正確な情報はありませんが、知る限りでは一般的「犯罪者」のタイプではなく、軍の司令官や政治家などですから、普通の人という印象の人が多い気がします。
・ICCの被告人が犯罪を犯した原因は、どのようなものでしたか?精神が弱く、感情のコントロールができないのでしょうか。それとも、育った環境に原因があるのでしょうか。
これも、いわゆる犯罪者のタイプばかりではないので、はっきりしたことは言えません。言えるのは、戦争状態にあることによって、ごく普通の人であった人が戦争という異常事態のため、犯罪者となってしまうことです。
・アンサール・ディーンやアキムのリーダーではなく、なぜアル・ハッサン氏が逮捕されたのですか?
逮捕状が出ている中で、アル・ハッサン以外の人(アル・ハッサンの前にもう一人逮捕され、裁判の結果有罪になっていますが)がアル・ハッサン以降捕まっていないのです。
・ICCが取り扱ってきた個別事案について、さらに知ることができればと思います。
・他の具体的な事例を知れたらより面白そうだと感じた。
ぜひ関心を持ってください。
ICCのWebでは、裁判に関する具体的な資料が公開されています。
・今回のお話によると、ICCで裁かれた人はアフリカの地域の人が多いように感じたのですが、実際どうなのでしょうか。
実際に裁判にかかった人は今のところ、アフリカの人ばかりです。しかし、今はそれ以外の地域の人も予審にかかっていますし、そうした地域の人々にも逮捕状が出ていますので、将来は別の展開になっていく可能性があります。その後、フィリピンの元大統領ドテルテ氏が、逮捕され、予審に掛けられています。予審が犯罪事実の確認をすれば、公判に進む初めてのアジア人ということになります。
・ICCの裁判例をもっと詳しく知りたいと思いました。太平洋戦争に突入した日本軍も国際犯罪に当たるのではないかと考えます。日本軍をICCが審理した場合どうなるか、考えてみたいと思います。
はい、考えてみてください。
もちろん、そうした時期の事件にはICCの管轄権(時間的管轄権)は及びませんが、その時代にICCがあったら、どうなっただろうか、を考えることは、とても大切なことだと思います。
・具体的な手続を見てみたい(お話に出ていた模擬裁判などはとても良い試みだと思います)
ありがとうございます。
2 ICCで働く人たちについて
(1)ICCで働くには?
・ICCで働くにあたって資格は必要ですか。日本では司法試験の合格で法曹三者になれますが、ICCで働くには、ローマ規程の法律を学んで、ローマ規程の試験を受けるのでしょうか。
職種によって様々な選考方法があります。多くは、記述式テストと口述試験によって決めます。事例問題、理論問題などその職種、地位によって違います。
・ICCの弁護人は、ICCの職員なのですか?
基本的には、職員ではないですが、ICCの書記局には公設弁護人事務所があり、臨時・緊急時には被疑者等の弁護人を務めることがあります。また、被害者用の公設弁護人事務所も別に置かれており、こちらは資力のない被害者などに比較的利用されています。
・ICCの検察官、裁判官に選挙で選ばれるためには、具体的に何が必要ですか?
国際刑事法あるいは国際人権法等の知識・実務的な能力、語学力等です。それ以外は、高い識見と高潔さなども要求されます。
・ICCなどの国際機関で働くために今からやっておいたほうがいいことはありますか
必要な能力は、その国際機関に必要な専門知識と経験を積むこと、後は語学力です。しかし、若いうちにそれをしたほうがよいかどうかは私にはわかりません。自分の好きなことを見つけて専門知識を磨くほうがよいようにも思います。
(2)ICCで働くことの実際
・ICCで働くにあたって、犯罪グループに目をつけられ狙われることはありますか? そういった危険への対策は、どのようなものですか?
ICC内及びホスト国であるオランダなどと協議してさまざまな対策をしていますが、各人のセキュリティに関わるので詳しくは言えないです。
・ロシアからの逮捕状、トランプ大統領からの介入など、困難な中でICC所長として活動されていることに対して、身辺上の安全等についての心配はないのか危惧していますが、大丈夫でしょうか?
ありがとうございます。詳しくは話せませんが、オランダや日本と協力しつつ、ICC自体も様々な方策を施しています。大丈夫です。
・ICC職員の収入、給料等はどのくらいですか? 情報は公開されていますか?
職員の収入は国連の基準に沿って決められています。例えばP2~,P5, D1など。
裁判官は、Under Secretary レベルの報酬を受けます。毎年の物価の推移などにより、国連基準によって変更されます。
3 ICCにおける赤根所長の経験についての質問
(1)裁判官として
・なぜICCの判事になろうと思ったのですか?また、判事の仕事をしている上でのやりがいなどありましたら教えていただきたいです。
ICCの判事に手をあげたきっかけは、当時の上司に勧められたためです。
様々な国から来た裁判官や法務官と一緒に働き、様々な考え方を知ることができることなどにやりがいを感じます。
・今まで行ってきた裁判の中で特に印象に残るものはありますか。
すべて印象に残っています。いずれも悲惨な結果を引き起こした戦争犯罪などです。
・犯罪を犯した人たちをみてきてどんな心情を持ちましたか。
戦争さえなかったら、この人たちも犯罪を犯さなかったかも、と感じました。
もちろん、彼らが犯した犯罪は、極めて重いものです。しかし、犯罪者も戦争という悲惨な出来事の被害者である、という面もあります。その意味では、裁判の事件が解決しても、スッキリするわけではありません。
個人的に犯罪者に対する怒りは湧いてきません。しかし、被害者の被った被害を考えると、胸が痛みます。
(2)所長として
・所長としての、一日のスケジュールの例を教えていただきたいです。
朝5時半ころ起床で、夜は10時から11時に就寝します。食事やシャワー以外はなんらかの仕事をしていると思います。
事務所(9時過ぎから17時半ころ)と自宅(リモート)で(夕方7時ころから9時ころ)で、仕事漬けの毎日です。
・ICC所長として、心がけておられることは何ですか?
職員の前、対外的場面で笑顔を忘れないことです。
・所長として残りの任期中に成し遂げたいと思っておられることについて教えてください。
まずは、ICCの存続に向けて全力で取り組みたいです。また、できれば、ICCのアジア支部を日本に設置する基礎を固めたいと思っています。
(3)ICCの一員として
・どのような時にICCの効果を感じ、どのような時にやりがいを感じますか?
毎日がチャレンジなので、効果ややりがいについて深く考えることがない、というのが正直なところです。毎日毎日の積み重ねであると思っています。もちろん、毎日夜に仕事が終わったとき、それなりにやりがいを感じます。ですが、深く味わっている暇はありません。
・ICCで働いてよかったと思ったことや印象にのこったことはありますか?
世界中の人と一緒に働いて同じ目的を目指せることです。
法廷で証言する被害を受けた人から、ICCに対する感謝の言葉を聞いたときは、ICCで働いてよかったと本当に思います。
・ロシアやアメリカに逮捕状や制裁まで加えられ、命に関わる状態でも仕事を続けられるモチベーション、思いはどのようなものでしょうか?
日本人の皆さんからの応援がある限り、モチベーションは下がりません。誰かがやるしかないと思っています。
・お仕事をされていて、どんな時やどんなことにやりがいや悔しさを感じられるのか、教えていただきたいです。
悔しさは、思うように事件解決が進まないことです。やりがいは、仕事をする中で、その都度感じることもあるにせよ、それをじっくり味わう暇はないです。
・アメリカやロシアからICC裁判官に対しての対応に関しては、世界平和のために日々奮闘している人たちになんていうことをしてくれるんだと、怒りがわいてきました。そのような中でも「淡々と仕事をする」とおっしゃられていましたが、モチベーションは下がりませんか?メンタル的にやられたりしませんか?
モチベーションが下がることはありません。誰かがやらねばならないことだと思っています。皆様からの応援に支えられている気がします。」
4 ICCの成り立ちや存在意義など
(1)ICCの役割や存在意義など
・国内裁判所における違憲審査のように、ICCで国際的な法の見直しや見直しの勧告することはあるのですか?
そのようなことは行いません。
・ローマ規程に加盟していない国がある中で裁判を行う、ということに矛盾を感じますが、いかがでしょうか。
私は、矛盾は感じません。
できることをするしかないし、それを地道にしていくしかなく、それがやがて認められていくはずと思っているからです。
もちろん、締約国を増やしていくことが重要であるとは思っています。
・締約国ではないロシアのプーチンなどに逮捕状を出すことには、どんな意味があるのでしょうか。
一歩一歩前に進むための大事な仕事であると思っています。逮捕状を出さねば次には進めません。いつかはそれを執行することができることを信じてやっています。
・国際司法における問題として、公権力の欠如、すなわち、ICCローマ規程の批准やその執行の強制が各国に委ねられていることによる国際法の適用の限界の存在が挙げられるかと思います。国際社会が各国の合意により基づくという原則の中で、法の支配の強化にはどのような方策があるのでしょうか?
私は実務家なので、地道に実務に取り組み、その実務の積み重ねをもって周囲に裁判の重要性を理解してもらい、ゆっくりと、しかし、着実に世界の人々からの信頼を得ていくしかない、と信じています。とても時間はかかります。まどろっこしいです。ですが、それが法を守り、実効性を徐々に上げていく唯一の手段だと思います。
・戦争犯罪を犯した人に法の裁きを受けさせることが重要と信じたいですが、軍事大国の力による暴力を目の当たりにすると、法により正義が実現されるのだろうか、期待できないと感じます。国際・国内いずれについても、司法機関に希望を持つことができるとお考えでしょうか。
諦めてしまえばそれで終わりです。実務家のする仕事はそういうことの積み重ねによって地道に信頼を得ていくことのみ、と考えています。
希望は持ち続けたいし、それを信じる人々とともに戦いたいと思っています。
・ICCが生まれた歴史(世界史との関連)をもっと知りたいと思いました。
重要なことです。
・ICCの判決を日本の裁判に活かすようなことがありうるか
ありうるとは思います。ただ、そのためにも、日本でも中核犯罪(ローマ規程にある、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド罪、侵略犯罪)の国内法化を進めてほしいと強く願っています。
・国際社会における裁判所の役割について具体的に学びたい。
ありがとうございます。重要なことです。
・ICCがローマ規程の締約国からの分担拠出金で運営されている中、国家が関与している可能性の高い戦争犯罪を訴追することで、資金源である国家(特に拠出金の割合の大きい国)との緊張関係は生じないのでしょうか。
締約国の拠出割合は国連方式により自動的に決まるもので、各国の意思によるものではありません。ICCにはアメリカも中国も入っていないので、現時点では日本が最も多くの拠出金を出しています。2番目はドイツ。
拠出金が多いか少ないかにかかわらず、ICCは国の関与に関する捜査訴追をするのではなく、ある個人が中核犯罪を犯したかどうかについての捜査訴追をするので、締約国がそれに対して、拠出金支出に不満を申し述べるということは、論理的ではないです。また、実際にも、今までそうした事は起きたことはありません。
ただ、フィリピンがドテルテ大統領に対する捜査を見据えて脱退したことなどを踏まえると、政治的理由がICCに対する協力・不協力を決めることもないわけではないのは事実です。
(2)日本がローマ規程の締約国となり、分担拠出金を支出していることの意義など
・日本が最大の分担拠出金を支払っているのは、どうしてですか?
国連方式による算定(GDPや人口など)で自動的に決まるからです。アメリカや中国が入っていないため、日本が最大の分担金拠出国になります。
・日本は最大の分担拠出金を支払っているということですが、このことに、日本にとってのメリットはあるのでしょうか。
私としては、分担金は投資ではないので、経済的利益との関係でメリットを考えるべきではないと考えています。しかし、世界的にはそうした考え方がないわけではないのも事実です。
何がメリットなのかは、皆さんで考えてほしい点です。日本が多くの分担金を支払うことで、他の締約国からの尊敬を得ていることは事実ですし、日本も分担金が必要な分野に正当に使われているかどうかについて常にしっかりとチェックしているし、その他のICCの活動に関しても監査等を通じて監督機能を果たしています。また、ICCの活動全般に関しても常に積極的に関わっています。
・日本がICC締約国に入っていることのメリットは、何なのでしょうか?
ICCに参加する意味、メリットとは何であるべきかを根本的に追求してみてほしいです。
世界における不処罰の文化を終わらせ、法の支配を貫徹していくため、日本が、締約国の一つとして努力していくこと、そして、それが徐々にでも実現されていくこと。これらのことから、日本としても日本国民としても大きな恩恵を得ると思います。現に、日本によるICCに対する関与は、日本の国際的貢献として世界から評価され、尊敬される理由の一つとなっています。さらに言えば、裁判官を出したり、職員を送り込んだりすることで、世界における法の支配のあり方、世界の国々の法の支配のあり方などを間接的に学ぶ機会にもなり、ひいては日本の刑事司法制度の改善にもつながる道がひらけていると思います。
・ローマ規程を締約していない国もある中で、日本がICC締約国に入っているのは、何のためなのでしょうか。
日本は、各要素を十分検討した上で、参加を決めました。また、日本は、ICCに加盟するにあたり、「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律」(いわゆるICC協力法、手続的な法律)を定めました。皆さんも入っていない国がなぜ入らないのか、入った国がなぜ入るのかについても改めて考えてみるといろいろな発見があると思います。最近ではアルメニアやウクライナが新たに締約国に加わりました。
5 ICCの課題や展望
(1)裁判手続きの課題
・慎重な審査を行うため、予審、一審だけでも合計8年もの時間がかかる事を学びました。昨今、日本の裁判は人質司法と呼ばれることもあるほど長期的な裁判が問題視されていますが、国際刑事裁判所において長期的な裁判について問題視されていないのでしょうか?
日本国内の事件とはかなり異なることもあり、裁判等に比較的長い時間がかかることについてやむを得ない点もありますが、できる限り迅速な裁判になるような努力が必要であるという認識は裁判所内にも締約国にもあり、ICCとしても努力もしています。
・ICCの逮捕状が長期間執行されず、加盟国が引き渡し義務を無視し続けた場合、国際刑事司法制度の実効性は失われるのではないでしょうか。その懸念についてどう考えていますか?
ニュースなどではマイナスの事実のみが大きく取り上げられるので心配される方も多いです。また実効性の点で懸念はないわけではありません。ですが、長い時間をかけ、次第に、ICCに協力する国々が増えていると思います(締約国はもちろん、締約国以外でも)。実効性は、過去に比べたら、確実に上がっています。今後、さらに実効性を上げるには、これからの長く地道な努力が必要です。
・ICCは独自の捜査機関を持たず、刑の執行等を加盟国の協力に頼っていますが、その協力体制には差があります。このような制約を克服するために、ICCに独自の捜査権限を与える、あるいは安保理の影響力を弱めるなどの政治改革が可能だと考えますか?現場の実務的視点からのご見解を伺いたいです。
ちなみに、ICCは検察局の中に捜査をやる部門があるので、捜査機関がないというわけではないです。しかし、国家の主権を無視して強制力を行使することができないため、各国の協力がなければ、効果的な捜査や逮捕ができないのは事実です。これらを実現するためには、ローマ規程の改正などを必要とするので、締約国次第ではあります。
しかし、個人的には、ローマ規程の改正では乗り越えられない問題が多いと感じています。つまり、ローマ規程を改正してICCにこれらの権限を与えようとすることは、かえって分断を生んだり、ICCによる政治的な影響力が問題になるということが増えることにもなりかねないからです。
私としては、それよりも、ICCが裁判所としての実績を上げて、多くの国々から信頼を得ていく地道な努力によってこうした問題を打開していくほうが現実的であると考えています。そのためにも、地道に実務に取り組むことが大切です。
(2)締約国の拡大
・締結しない国が、締結しない理由は何ですか?それをどのようにクリアするのがよいとお考えですか?
非締約国がローマ規程を締結しないことには、様々な理由があります。クリアするのには時間がかかります。難しい問題です。ちなみに米国などは自国民がICCに裁かれる危険があるから入らないと言っています。しかし、補完性の原則があるため、自国で適切に捜査訴追していればその国の人がICCで裁かれることはないことはローマ規程においては自明のことです。
・アジア諸国のローマ規程締約国を増やすにはどうしたら良いと思いますか。
様々な方法で広報活動をし、参加することの重要性を伝え続けること以外にはないと思います。また、ICCが裁判所としての機能を地道に果たし続けることが重要です。私が提唱する日本にICCの広報拠点を作ることも、その一手段になると思います。
・日本を中心にアジア諸国のICCへの存在感を大きくしていくために、日本支局等設置の他に考えておられることがありましたら、伺いたいです。
アジアの締約国の活動強化です。多くのアジア諸国は、ICCの活動に無関心です。私は、機会を捉えてアジアの国々に働きかけています。即効性のある解決策はなく、地道なかつ組織的な努力が必要だと思います。
・大国を参加させる道筋を、どのようにつけていったらよいのでしょうか?
・アメリカやロシア、中国など大国に参加してもらうにはどうすればいいか
これらについては、みんなで考えてもらいたいです。そんなに簡単ではない問題です。
さらにいえば、大国をローマ規程に参加させる責任をICCが負うという考え方自体が問題だと思います。ICCの責任であるよりも、ICCを作った締約国、締約国の国民の責任ではないでしょうか。
(3)日本支局
・ICCの日本支局を作られたいというお話を以前伺いました。日本人からもっと能力と意欲を持った人たちがICCで働ける機会とつながりを作っていただけたらと思います。日本支局のプランをお持ちでしたら、是非教えてください。
・ICCの支部を作った場合の国内での活動としてどのようなことができるか
協力的な大学の一角に事務所を設置して、ICCの事務所とすることを構想しています。皆さんと一緒に考えていきたいですが、夢は広がります。
ICCのアジア拠点が日本にできれば、若い人にインターンとして参加してもらいやすくなり、ICCが身近に感じられるようになります。模擬裁判などをICC職員と一緒にしたり、ICCの裁判官や職員などを招くこともやりやすくなります。その他のイベントもたくさんできるはずです。アジアから日本に来ている留学生と一緒にICCをテーマにする勉強会をすることもできます。他に高校、大学等への出張講義などもできますよ。
・アジアブランチの設置の実現にはどうしたらいいか。
実際には、締約国会議でこれを決めなければ何も進みません。日本政府と国民の積極的協力が絶対的に必要です。日本政府が締約国会議でこれを強く主張して他の国を巻き込んでいくことが、実現につながります。日本の学生や法曹、市民からも、これを歓迎するとの意思表明をすることが、推進力になるはずです。
6 赤根所長の考え方や生き方、日本の若者への期待等
(1)赤根所長の考え方や生き方、働き方について
・赤根さんが、高校時代、大学時代にやってよかったと思う経験、また今に繋がっていくターニングポイントがあれば教えてください。
テニス部での活動を通じての体力づくり。司法試験の受験。大学時代のサークル活動(法律相談)。検察官になってからですが、アメリカ留学。
・困難なこと、大きな力に立ち向かう際の心構え、大切にしていることを教えてください。
やれることをやれる形で、長期的な視点を持って取り組む。
そのうえで今やれることを思い切りやる。
人生は一度しかないと思うこと。
・ICCで働くまでの道のりはとても大変だと思います。その中で挫折も失敗も、後悔など様々あると思いますが、どのように立ち直り目標を持ち前を向いていますか。
後悔はすればするほど気持ちが重くなります。一人で悩まないで信頼できる仲間と真摯に議論し、打開策を講じ、前を向いてください。
夜の睡眠は大事です。朝になったら、前の日の後悔を前向きの力に変えることができます。
努力すれば、これを理解して応援してくれる人は必ずいます。辛いときは、今は雌雄のとき、とあえて「認識」し、この状態が一番悪いときだから、改善の余地あり、と信じて今できる努力を続けることです。
それから、みんなの前では無理してでも笑顔を見せるようにすること。笑顔は、必ず相手にも自分にも力を与えます。
(2)日本の若い人に向けてのメッセージなど
・長年の検察官としてのキャリアやICCでの経験、他国の法律家との交流の中で感じた、日本の司法の良い点、改善点がありましたら教えていただきたいです。
良い点はいろいろあります。西欧の制度を継受しながら、改善の努力で日本的かつ西欧に負けない制度を作ってきたことや、日本の法曹の能力の高さ、順応性の高さなどです。
今の状況に甘んじないで、常に改善に前向きになることが必要です。100年先、1000年先を見て考えることが必要だと思います(中核犯罪の国内法化などが典型例です)。
外に対してもう少しオープンになることが必要だと思います。悪い点を指摘された場合の対応などに島国根性などが残っている?と感じることがあります。批判には正しく反論し、他方で改めるべき点は改めるという態度を取るべきだと思います。
・国際的な裁判所で日本人の所長が複数生まれている理由は何でしょうか
日本のこれまでの法の支配を貫く姿勢、平和主義、国民性などが評価されたことに加え、選ばれた人の個人的理由などの複合的なものだと思います。
・イタリアの大学でのサマースクールに参加した大学生が、参加している他国の大学生全員の英語力、専門知識、他国への関心・知識のレベルが比べ物にならないと衝撃を受けていました。日本の学生自体の留学も増えていかず、自国のなかで暮らしているだけでは世界のなかで活躍できないと思いますが、国際機関で働くための英語力はどのように身につけるといいのでしょうか。
英語力は後からでもつけられます。まずは、国際社会で必要な知識を身につけること(これは国内の大学でも十分。)と、自信をもって意見をいうこと(海外の人の発言を、じっくり聞いてみてください。海外の人が必ずしも知識を持っていない部分も誤解している部分もあるし、日本人の方が正しいこともたくさんありますよ)。
やりたいことがあれば、語学力は、それを言いたいという気持ちから、必ず改善できます(あるいは、自分で努力できます)。語学力を高める方法はいろいろありますので、自分にあったものを見つけてください。私は英語学校に行きましたが、それが誰にとっても必ずしも良いとは言えません。
7 日本、日本人、国際社会に期待すること
(1)国際社会に対する期待
・アメリカからの制裁を受けている状況を克服するために、国際社会にはどんなことを期待されますか。
各国国民が声を上げること。それから、自国政府に声を上げるように働きかけること。
(2)日本や日本政府に期待すること
・アメリカトランプから制裁を受けていて、日本政府などに、支援を求めているとのことですが、日本政府には、具体的にどんなことができますか?
これについては、日本政府がアメリカ政府に「友人として」「同盟国として」助言することができると思っています。
・アメリカへの外交的な働きかけの可能性があるかについて知りたいです
あると思います。
政府として、また市民(団体)として、アメリカ政府やアメリカ人との交流を通じて。その具体的方法についてはそれぞれの立場もあるので、皆さんに考えてもらいたいです。
・他国から身の危険にさらされる状態にあって、日本国政府はどのようなバックアップをしているのでしょうか?
いろいろしてもらっています。ただ、詳しくは言えないです。
・ICCが訴追している中核犯罪について、日本でも処罰が行えるようにするために、日本にてどのような取り組みができますか
市民、弁護士会、学会レベルで勉強会を盛り上げていくことがまず大切です。政府にも、そうした勉強会を立ち上げてもらいたいし、積極的に参加してもらいたいと思っています。
・ICCが有効に機能するために、日本政府には、どのようなことができると、お考えでしょうか?
・国内法の制定の実現にはどうしたらよいか。
・日本法自体が不十分と言われていたが、法改正に向けて何か動きはあるか。
・日本のありかた/日本が世界のためにできること/日本人ができること
・日本がこれから世界の問題、国際的犯罪と向き合うために何をしているのか
これらの質問については、今までにお答えしたし、今、動いているところです。正答はないし、すぐに解決できるものでもありません。市民一人ひとりが意識的に考えてほしいし、機会を捉えて問い続けてほしいと思っています。
(3)日本の市民にできること
・ICCを対象とするアメリカからの制裁などの厳しい状況がある中、市民社会はそれに対してどんなことをすることができますか?
・アメリカによる制裁などに問題意識を持つ日本の市民には、ICCのためにできることはありますか?
・ICCが有効に機能するために、日本社会(=私たち)には、どのようなことができると、お考えでしょうか?
・ICCについてその役割や現状の問題などをぼんやり感じてはいましたが、問題の整理ができる機会はそれ程待ち得ません。この何となく知っている事と、問題を自分の中で浮かび上がらせる事には実は深い差がある気がします。一般市民がその差を埋めるには何をどうしたらいいと先生は思われますか。
これらについては、答えはないです。
こうしたイベントに参加して興味を持ってもらうことが第一歩です。
世界のため、日本のため、世界平和を守り、法の支配を貫くにはどうしたら良いのか、不処罰の文化をどうしたら終わらせることができるかなどを考え続けることが大事です。
学生、研究者、法曹、市民の立場で、それぞれでできることはたくさんあると考えています。

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