今回は、現在の世界情勢やそれに関連した質問への回答を掲載します。
なぜマリ、ニジェールといったアフリカの国ではICCを脱退する動きが台頭しているのでしょうか。
これらの国では、軍事政権ができたので、ICCのような国際裁判所は彼らの利益が害される、と思っているのかもしれませんが、本当のところは、わかりません。
アメリカがチャドにICCからの脱退を要請していたという報道に関して、今後アメリカに限らず、自国へのICCの捜査を懸念する非締約国が、締約国に脱退を促すような動きは広がっていくと思いますか。
そうならないように、日本など主要な締約国が力を尽くさないといけないですね。
ICCの締約国は法の支配の重要性を理解している、とお話しされましたが、それにも関わらず、脱退国が出ているのはなぜですか?
その理解というのにも濃淡があるし、例えば軍事政権などができてしまうと、国の形が変わってしまい、今までとは違った点に価値を置く場合もあるわけです。その意味では全ての締約国が法の支配の重要性を理解しつつ、他の理由で脱退してしまうこともある、というべきでしょうか。
プーチンがICC締約国であるモンゴルを訪問したにも関わらず、モンゴル政府はそのまま出国させたという事例もあったと思います。このような動きでICCの実効性がさらに低下してしまうのではないかと思うのですが、その点について赤根所長はどうお考えでしょうか。また、ICCがそのような動きに対してできることは何があるのでしょうか。
このような不協力が起きた場合には、ICCの裁判部は不協力認定をして、締約国会議などに委ねたりすることもあります。ただし、締約国がその不協力国に具体的な対策を取らせたりしたことはありません。それを持って実効性がさらに損なわれるとは限りません。不協力だった国がまずいことをした、と反省する場合もあります。いつも、締約国がその義務と権利を自覚し、ICCに協力をしてくれると実効性は上がりますね。
米国・イスラエルへ武器の売買や自衛隊員の派遣などの協力をすることにより、日本の首相や防衛大臣が逮捕される可能性はありますか?
武器輸出や自衛隊派遣はまだ現実的になっていないので、なんとも言えません。一般論としては、仮に日本の法制度内で可能なことをした場合でも、相手国で戦争犯罪などを犯す可能性がゼロではないでしょうが、現時点では限りなくセロに近いですし、仮にそのような事実があったとしても、日本法でその行為者を処罰すれば、その上にいる方々が逮捕されるという危険は現実的ではありません。
「大国」の行動により国際法への信頼が揺らいでいるなか、どうすれば信頼を取り戻すことができるのか。とりわけ日本人は、どのような意識でいればいいのか。
この問題は、簡単には答えられません。いつの時代にも大国が力を頼んで国際法違反を犯すことはありますが、それ自体が戦争犯罪とは限りません。また国際法は世界政府がない中ではあくまでも各国の協力のもとで力を発揮するのです。日本人としては、法の支配に忠実に、国際法を守れと議論と外交で対抗していく、時間はかかるけれどもそれがやがては多くの国を動かすような力になるやもしれません。諦めないで地道に続けることが大切です。
アメリカやロシアからの制裁や逮捕状により検察官や裁判官は移動や自由が制限されているとのことですが、ICCのあるオランダなどから検察官や裁判官に対する保護政策などは行われているのでしょうか。
はい、オランダをはじめ、締約国からはアドバイスや実際の護衛などで多大なる協力を得ています。
ロシアと直接的な連結点を有していない赤根先生に有罪判決を出すことに対して、日本はロシアに対して外交的庇護権を行使して、赤根先生に庇護を与えることはできるのでしょうか?外交的保護権ではなくても何かしら、日本からの保護は得られないのでしょうか?
外交特権のことでしょうか。ICCの判事などには締約国での外交特権のようなものが与えられています。それでも、ロシアのような国はそれを無視すると思います。締約国の中で守ってもらうことが重要です。
国際法として、ICCなどの国際機関で働く人への制裁を禁止することはできないのですか?
制裁自体に関してはアメリカの国内法によってなされているので、それ自体を禁止することは難しいです。しかし、その域外功あるいは域外効果については、それぞれの国や地域(EUなど)で立法して(ブロッキング法という)これをそれらの国では最小にすることが可能な場合があり、日本もこれに似た立法を考えるべきと思っています。
自分が逮捕されたり被害に遭ったりしてしまうかもしれませんが怖くないですか?また、任期が2027年3月に終わっても海外旅行は気をつけないと危ないんですか?
今までは危ない目にあったことはないですが、危険は存在します。また任期終了後も露からの逮捕状(いや今は有罪判決です)の効果は続くので、気をつけないといけないです。
自分が拘束されるのではないかと恐怖を感じることはありますか。また、逮捕状が出たと知ったとき、何を思い、感じましたか。
危険はありますが、いろいろな手段で守ってもらっていますので、今のところは安心して暮らしています。
ICCがもし今後なくなってしまった場合、また同じような組織が作られる可能性は低いですか?
はい、一旦潰れてしまったら、次に作るという合意は、今の世界の状況では、なかなかできないだろうと思います。ほとんど不可能になるのではないでしょうか。
ロシアやアメリカ、中国など主要国が批准していないことについてICCが政治的圧力を受けているということですが、その国々によってICCの存在が脅かされていることについてどう思われますか。
批准していない国々からの政治的圧力には屈しません。ICCは独立した裁判所であり、締約国の協力を得てその存続をかけて闘っていきます。頑張ります。
ウクライナ戦争に見られるAI兵器の登場で戦争の様相も変化しております。今後法による裁きが困難になるかと思いますが、いかがでしょうか。
戦争の手段が変わっていっても、戦争犯罪に該当するかどうかは特に変わりません。しかし、どのような証拠をどのようにして集めるかは我々も研究していかねばならないと思います。
「負けず前進するには、世界中の人々の支持と支援が必要不可欠」とおっしゃられていましたが、将来的には、現在はICCといわば敵対しているアメリカやロシアなどの国々もICCに加盟し、世界中の協力の下で国際法で個人を裁き、平和を目指したいとお考えですか。
ICCの理想は世界のすべての国々が加盟してくれることですが、各国の利害や理念が一致せず、なかなか簡単にはいかないです。しかし、長い時間をかけて努力して一つでも多くの国に加盟してもらうことが必要です。それはICCだけの努力では難しいので、他の締約国やNGOなどの助けを借りて粘り強くやっていくべきでしょう。
2026.7.13アメリカ合衆国国務省が発した「ICC解散キャンペーン」に対し、本日(2026.7.29)の日本経済新聞では、「ICCから脱退相次ぐ 途上国が同調」という報道があった。このような、「正義に反する力」への、具体的、かつ、「有効」な対処方法に関する考えをお聞きしたい。
簡単ではありません。日本のようにICCを強くサポートしている国々が協力しあって小さくて弱い国々を助け、脱退する国が広がらないよう活動していくことが必要です。
米国を始めとする非加盟国がICCの解体を訴えている中、日本がどのような立場を表明するかが気になります。最大の同盟国である米国からの同調要請に対し、はたして、日本政府は揺らぐことなくICC支持を貫けるでしょうか?
私はそれを信じています。
法の支配が脅かされている世界情勢の中で、日本政府に望むことをお伺いしたい。
まさに日本の出番です。政府だけでなく、我々国民もできることで法の支配を支えることが大事です。たとえば、こうした勉強会に参加したり、みんなで考える機会を持つだけで、問題の所在やこれからどうしたらよいか、についての新たな考え方が広がります。
自らの正義を主張する人や国にどのようにアプローチすることで、対話が生まれてくるのか、先生方の考えをお聞きしたいです。
難しい質問で、簡単にやり遂げられることではないです。国民にできることは、例えば、民間交流でもよいです。違う国の人達と付き合い、意見を交換するなどしてお互い理解を深めていくことが重要であろうと思います。
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